第05回 『 めまい 』平成16年09月11日(土)


めまいとは、自分の体や周囲は動いていないにもかかわらず、動いているように感じることを総称しています。何らかの病気に関連している場合もあれば、解熱・鎮痛剤などの内服薬で出現する場合もあり、また単なる乗り物酔いということもあります。一概にめまいといっても、その性状にも違いがあり、その原因も一般に思われているよりも意外と複雑で、ある意味医者泣かせの症状です。

  1. めまいの原因
  2. めまいの種類
  3. 回転性めまい
  4. 動揺性めまい
  5. 失神・たちくらみ
  6. めまいの対処法

01 めまいの原因

人間は、体の各部位の位置感覚、内耳の前庭神経の感覚、眼から入る視覚などの情報を、主として小脳で処理して体のバランスを維持している。
この経路のいずれの障害でもめまいを生じうるが、内耳や小脳の障害で回転性めまいが、その他では動揺性めまいが生じやすい。

人間は無意識に自らのバランスを保って行動しています。起立時や歩行時には体の重心は常に移動しており、また手足や頭部を動かすだけでも重心は変化します。
こういった状況の中でよろけたり転倒するのを防止するため、体のバランスを取る機構が存在します。
手足や体幹部の位置覚・視覚・内耳にある三半規管からの情報などが主に小脳に送られ、そこからまた体の各部位へ情報が送られ四肢の筋力などを調節して体のバランスが保たれます。
これら一連の反応は、大部分が無意識に行われています。
この機構のどこかに異常が生じるとめまいを感じるのです。


02 めまいの種類

めまいとは、実際は自分の体や周囲が動いていないにもかかわらず、動いているように感じること。

  1. 回転性めまい
  2. 動揺性めまい
  3. 失神・たちくらみ

めまいはその性状から大きく分けて三つに分類されます。周囲があるいは自分自身がぐるっと回転しているように感じる回転性めまい。座位時あるいは歩行時に体が左右に揺れているように感じる動揺性めまい。以上二つが代表的なものですが、これに加えて、気が遠くなるあるいは一瞬くらっとする失神や立ちくらみもめまいとして自覚されたりするため、めまいのひとつに数えられます。


03 回転性めまい

  1. 小脳出血
  2. 1以外の小脳半球障害(腫瘍・梗塞・変性疾患など)
  3. メニエール病
  4. 前庭神経炎
  5. 内耳炎
  6. 良性発作性頭位性めまい

回転性めまいは、主に内耳や小脳の病気で生じます。

  1. 小脳出血
    突発性のめまい・頭痛・嘔吐で発症します。出血の程度にもよりますが、多くは数分から数時間で意識障害が出現してきます。
  2. 1.以外の小脳半球障害
    小脳は真ん中にある虫部と左右の半球に分かれます。小脳は体のバランスを保つ中枢で、この半球の障害では、体動時や歩行時に回転性めまいが生じます。腫瘍や変性疾患では、病気が徐々に進行し、次第にめまいの程度も悪化してきます。小脳梗塞では、突発性の頭痛・嘔吐・めまいが出現し、小脳出血と似たような症状が出現することもあれば、腫瘍や変性疾患と同じような経過をとる場合もあります。
  3. メニエール病
    低音性の耳鳴や難聴の前駆症状があり、ある日突然回転性の激しいめまいが生じてきます。めまい発作は数分から2時間程度続きます。
  4. 前庭神経炎
    何の前兆もなくある日突然激しいめまい・嘔吐で発症します。耳鳴や難聴を伴わず、症状は数日間続きます。
  5. 内耳炎
    内耳炎は、中耳炎から炎症が波及してくるものが多く、激しい回転性めまいと耳鳴を伴った高度難聴となります。
  6. 良性発作性頭位性めまい
    最も頻度の高いものです。原因には諸説ありますが、内耳の機能障害が疑われています。ある朝起床時に激しい回転性めまいが生じ、しばしば嘔吐。いったん起立してしまうとめまいは消失。しかし、歩行時に動揺性めまいを感じ、頭位を変えると(首を動かすと)再び回転性めまいが生じるというのが、典型的な症状です。


04 動揺性めまい

  1. 乗り物酔い
  2. 脳血管障害
  3. 薬物の影響・副作用
  4. 体感覚の障害(糖尿病)
  5. 下肢筋力の低下
  6. 小脳虫部の障害(腫瘍や梗塞など)
  7. 神経症

  1. 乗り物酔い
    乗り物(飛行機・船・自動車など)の振動により内耳にある三半規管が過剰に刺激されてめまいを感じる。個人差が大きく、真の病ではありません。
  2. 脳血管障害
    脳血管障害(出血や梗塞)が広い範囲に生じると、意識障害や手足の麻痺がほぼ確実に出現します。しかし小さな梗塞(ラクナ)や出血、あるいは脳梗塞に至らない程度の脳虚血ではめまいのみが症状のこともあります。日常生活に支障がでる程ではないが、非回転性のめまいがなかなか消失しない場合は、脳血管障害を疑ってみる必要があります
  3. 薬物の影響・副作用
    解熱剤や鎮痛剤あるいは精神安定剤による中枢神経抑制作用によりめまいが生じることがあります。たいていは、倦怠感や眠気を伴っています。
  4. 体感覚の障害(糖尿病など)
    糖尿病あるいはその他の原因による知覚(特に手足の位置覚や深部知覚)が障害されると、無意識に行われているバランス保持が困難になり体の動揺に伴ってめまいを感じます。特に歩行時や立位時に症状が増強します。
  5. 下肢筋力の低下
    加齢やその他の原因により下肢筋力が低下すると、歩行時の足の運びが悪くなり、スタンスが広く歩幅の狭い歩行となります。歩行に合わせて体幹も左右に揺れ、めまいを感じることがあります。
  6. 小脳虫部の障害(腫瘍や梗塞など)
    小脳の中央部に位置する小脳虫部は、特に体幹部の平衡機能と密接な関係があり、この部の障害(腫瘍や梗塞など)では、常に体が動揺します(座位でも立位でも)。歩行時にはより顕著となり、酔ったようにふらふらと歩行し、めまいを訴えます。
  7. 神経症
    神経症ではいろいろな症状が出現しますが、めまいが主症状のこともあります。特に過換気症候群(心理的な要因で速い呼吸が突発性に出現すること)では、血液中の炭酸ガス低下により脳血管が収縮し、脳血流が低下してめまいを生じることがあります。その他、うつ病でも、めまいのみが主症状であることがあります。


05 失神・たちくらみ

  1. 起立性低血圧
  2. 貧血
  3. 低血糖
  4. 内頚動脈閉塞(狭窄)椎骨動脈閉塞(狭窄)、脳底動脈狭窄
  5. 不整脈
  6. その他(てんかんなど)

*失神(一瞬気を失うこと)・たちくらみ

  1. 起立性低血圧
    起立時には、重力の影響で血液が下半身に集まります。通常は、自律神経の働きで血管が収縮し、下肢への血流を減じて血圧を上昇させて脳への血流が保たれますが、中にはこの反応が弱く、脳への血流が低下すると、起立時のめまいが出現します(クラッとする、一瞬気が遠くなるなどと表現される)。
  2. 貧血
    赤血球が不足した状態が貧血です。赤血球は体内のあらゆる臓器へ酸素を運ぶ役目をしており、これが不足すると、脳の酸素不足からめまい(フラフラするという訴えが多い)を生じることがあります。
  3. 低血糖
    脳は、エネルギー源としてグルコース(糖)しか利用できません。低血糖状態では脳へのエネルギー供給が滞り、脳機能の低下からめまい(フラフラ感や気が遠くなる感じ)が生じることがあります。
  4. 内頚動脈閉塞(狭窄) 椎骨動脈閉塞(狭窄)
    脳への血液供給は、左右の内頚動脈および椎骨動脈の計4本から供給されています。いずれかの血管に閉塞や狭窄があると、何かの拍子に脳への血液量が低下し、めまい(回転性であったり動揺性であったりします)が生じることがあります。これに他の神経症状(手足の麻痺や意識障害)がある場合は、脳梗塞である可能性が極めて高くなります。
  5. 不整脈
    徐脈(1分間あたりの脈が少ないこと)あるいは一定時間心臓が収縮しないタイプの不整脈では、脳への血流が低下して気が遠くなるようなめまいを感じることがあります(重度では失神)。
  6. その他(てんかんなど)
    てんかん発作は、全身けいれんを起こすタイプのものばかりではなく、気を失うタイプのてんかん発作もあります。


06 めまいの対処法


  1. めまい(回転性・動揺性)に続いて意識障害が出現
    重症の脳血管障害の可能性あり、救急車要請
    →救急医療機関
  2. 激しい頭痛・嘔吐・回転性めまいが、ほぼ同時刻に出現
    小脳出血の可能性あり、救急車要請
    →救急医療機関
  3. 意識障害はないものの、めまい(回転性および動揺性)に、半身の脱力(麻痺)・しびれ感・言語障害などを伴う場合
    軽い脳血管障害(梗塞や出血)の可能性あり、できるだけ早期に医療機関受信
    →脳神経外科
  4. 回転性めまい・嘔吐のみ
    安静・臥床し、改善なければ医療機関受診
    →耳鼻咽喉科あるいは脳神経外科
  5. めまい(動揺性)のみ
    数日で改善なく、持続性であれば、医療機関受診
    →脳神経外科あるいは内科
  6. 失神
    なるべく早期に医療機関受診
    →内科受診
  7. 立ちくらみ
    数日で改善なければ医療機関受診
    →内科受診














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